2024/01/21
自律神経を整えて、心と体を健康に!
自律神経とは、心臓や呼吸、体温調節など、私たちの体のさまざまな働きをコントロールしている神経のことです。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つの神経から成り立っており、交感神経は興奮状態を、副交感神経はリラックス状態をコントロールしています。
この2つの神経は、常に拮抗しながら働いていますが、ストレスや睡眠不足、偏った食事、運動不足などの原因で、バランスが崩れてしまうことがあります。
自律神経の乱れをしめすサイン
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眠れない
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めまいや耳鳴りがする
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胸が苦しい、ザワザワする感じがある
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電車に乗ると動悸がする
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いつも手足が冷えている
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体の一部だけ汗をかく
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胸やけや満腹感がつづく
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下痢や便秘を頻繁に繰り返す
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肩こりや腰痛がなかなか治らない
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気候の変化に弱い
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やけにまぶしく感じる時がある
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のどに違和感がある
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風邪でもないのに頭が痛い
この上記にあてはまる項目がある方は自律神経が乱れているかもしれません。
1ずつ解説していきます。
眠れない
自律神経が乱れると、本来眠っているはずの交感神経が働き、緊張状態が続いてしまいます。
たとえば昼間に仕事などで緊張している状況で、眠気を感じることなんてありませんよね?それは交感神経が働いているからです。一方、眠っている間は副交感神経が働き、リラックスしている状態になります。このバランスが乱れると、眠りの最中も緊張状態がとけず、上手にリラックスできなくなってしまうのです。
眠る前にカフェインやアルコールを摂取することや考えごとをすること、スマホを見ることなどは交感神経を高める原因となり、睡眠の質を低下させます。また身体という視点で考えると、内臓の働きが弱っていると睡眠の質が悪くなります。内臓が正常に働いていれば、副交感神経が働き、リラックスした状態になります。
目眩や耳鳴りがする
これらは、浮動性めまい、回転性めまい、起立性低血圧と呼ばれる、めまいの症状です。また、キーンと金属音のような高い音が聞こえたり、ボオーと飛行機のエンジンのような音がしたりするのは、耳鳴りの典型的な症状です。トンネルに入った時のような耳が詰まる感じがずっと続くこともあるでしょう。これらの不調も、自律神経の状態が密接に関係しています。
自律神経が乱れて交感神経優位の状態が続くと、つねに緊張していることになります。すると、首や肩、背中の筋肉、さらには頭蓋骨を包み込む筋肉も硬くなり、脳脊髄液の流れが悪くなります。こうして行き場をなくした脳脊髄液は、頭から内耳(耳のもっとも内側にあたる部分)に流れ込んでしまうため、めまいや耳鳴りのような症状を引き起こすのです。
胸が苦しいザワザワする感じがする
何かに焦りやストレスを感じていたり疲れていたりする時に、胸の苦しみやザワザワする感覚をおぼえることはありませんか?そうした感覚が離れないのは、自律神経失調のサインです。
症状が続いたまま放っておくと、ひどくなるとパニック障害になることもありますから、十分注意をしなくてはなりません。パニック障害とは、思いがけないタイミングで突然、動悸や息切れ、強い不安を感じてしまう症状のことです。
電車に乗ると動悸がする
特定の行動をした時になんらかの不調が出るというのは、パニック障害が疑われる、あまり良くない兆候です。
こういった症状が一番出やすいシチュエーションは、満員電車に乗っている時です。さらにいえば、どこかの目的地に向かう移動の道中に症状をうったえる方が多いということです。
これはパニック障害の典型的な症状です。何かを目指している時に浮かぶ不安や緊張が、症状を引き起こしているのです。
なのでパニック障害は、不安や緊張がなくなった帰りの電車では、たとえ満員電車でも、症状が出ません。他にも飛行機の機内や渋滞中、トンネル内。
あるいは美容院や歯医者、狭い所など、自由に行動ができない環境や、長時間拘束されて焦りや不安を感じる状況で起こることがほとんどです。
これらの症状もまた、交感神経が活発に働くことで起こります。
いつも手足が冷えている
冬の寒い時に手足が冷えるのは、冷たく低い外気温にさらされているから当然ですが、気温が高い時でも手足が冷えているとすれば、それは、自律神経の乱れにより、体温を上手に調節することができなくなっている状態と考えたほうが良いでしょう。
人間の体は本来、寒くても体温が一定になるよう、体温を上げる働きがあります。血液が手足の未端まで行き渡り、筋肉に酸素や栄養素を送ると、ミトコンドリアという器官が、熱となるエネルギーを生産してくれます。これにより体温が上がるのです。
しかし、自律神経が乱れると、この働きがうまくできなくなります。
体の一部だけ汗をかく
日常生活をしている中で、上半身だけ、もしくは体の一部だけ汗をかいているーそんなことはありませんか?
上半身だけが火照っているとしたら、それは交感神経の働きが強くなり、血管が収縮し、血圧が上がり、上半身だけに血液が集中しているという状態です。
このような状態の時には、同時に手足の冷えも発生していることが多いです。また、更年期障害のホットフラッシュと呼ばれる症状も、上半身だけ暑く感じ、火照り状態の一種となります。
胸やけや満腹感が続く
これらの症状は、自律神経が乱れて、交感神経が活発に働くことによって胃の働きが弱っている時に起こります。
胃の働きはとても重要です。胃が弱っていれば、食事をしてもうまく消化できません。化がうまくできないと、食べ物が胃の中に残っている時間が長くなります。胃の中に食べ物が残っている状態が長く続くと当然、胃の満腹感が続きますから、結果的に食欲がわかなくなる。というわけです。
反対に、もっと消化を良くしようと胃酸をたくさん出しすぎてしまうこともあります。これは胃のむかつきや胸やけ、胃痛の原因になります。
さらに胃酸が食道に逆流した場合には、逆流性食道炎と呼ばれる症状となり、胸がやけるような強い痛みがあります。
胃酸は食道や胃壁を傷つけることがあり、胃潰瘍などをつくりだす原因にもなりますので、気をつけなればなりません。
下痢や便秘を頻繁に繰り返す
自律神経は腸にも影響します。症状が重くなると、過敏性腸症候群といって、不安や緊張を感じた時などにお腹が痛くなり、下してしまうという方もいらっしゃいます。
交感神経の働きが強く、副交感神経の働きが弱くなっている時に内臓の働きは弱りますが、その中でも大腸が弱っている時に起こるのがこの症状です。
大腸の働きが弱くなる原因として、カフェインや甘いものをたくさん摂っていることが考えられます。カフェインは交感神経の働きを強くする作用が、砂糖などの甘いものは大腸の善玉菌を減らしてしまう作用が、それぞれあります。自分が何気なく食べているもののせいで下痢や便秘の原因がつくりだされているとしたら、こんなに損なことはありませんよね?
まずは、大腸にとって良い食べ物を摂ることが必要です。
肩こりや腰痛がなかなか治らない
自律神経の乱れにより交感神経の働きが強くなれば、筋肉は緊張状態となります。そして交感神経が働き続ければ、あわせて筋肉も緊張し続けます。
中でも腰椎を支えている筋肉が緊張し続けると、腰椎が歪んでしまい、歪んだ腰椎が神経を圧迫するということにもなりかねません。現代人は緊張する場面にさらされがちですので、これが腰の痛みの原因となることが非常に多いのです。
また、交感神経の働きが強くなり、内臓の働きが弱ると、内臓を包み込む筋肉が張ってお腹や腰を圧迫してしまうという現象も起きます。
気候の変化に弱い
雨や台風が来る時は、気圧が下がります。
この気圧との関係性が、自律神経の乱れと大きく関係しています。私のもとにいらっしゃる患者さんでも、自律神経に端を発する内臓不調を抱えている方には、気圧の変化に弱いようです。
では、なぜ内臓や、それにともなう自律神経の不調が気圧の変化と関係しているのでしょうか。ご説明しましょう。
内臓は袋状で、平滑筋という筋肉が覆っています。この筋肉が動くことによって、臓器の収縮拡張は行われています。
筋肉には、弱ると硬くなる、張る、脈を打つという特徴があります。そのなかでも、筋肉が張っている状態の時に気圧が下がると、さらに各臓器が膨らんで働きが悪くなるのです。
やけに眩しく感じることがある
この症状は、暗孔の調節機能が関係しています。
瞳孔は、明るいところでは小さく閉じ、暗いところでは大きく開くという働きを行っていて、つねに光を取り込む量を調節しています。
この瞳孔の調節機能は、自律神経が動かしてくれています。
まぶしいと感じたら閉じる、暗いと感じたら開くということを、自分で意識しなくても、自動で行っているのです。
大変便利なこの機能ですが、自律神経が乱れると、この瞳孔の調節機能が正しく働かなくなってしまいます。明るい強い光が入ってきても瞳孔をうまく閉じることができずに、まぶしく感じるのです。
反対に、暗いところでなかなか目が慣れないというのも、自律神経の乱れが原因です。交感神経の働きが強くなると、瞳孔を開く作用が強くなり、常に開きっぱなしになりやすいのです。特に寝る前にパソコンやスマホなどのLEDの光(ブルーライト)を浴びると、脳が興奮して交感神経が高まるとともに、瞳孔を閉じることができなくなってしまうので要注意です。
のどに違和感がある
のとの違和感については、自律神経の乱れの典型的な症状の一つです。
一般的に、何かを飲み込むという行為は、自分の意志で行う場合と、自律神経が行う場合があります。普段は意識をしなくても、自律神経が勝手に動いてくれています。
交感神経の働きが強くなると、この自動的に飲み込むという行為が、うまくできなくなるため、自分で意識しないと、つばも飲み込むことができず、詰まりなどの違和感が生じてしまうのです。
また、交感神経の働きが強くなり、胃の働きが弱くなると、胃酸が出すぎて、逆流性食道炎を起こすことがあります。そうなると、食道だけでなく、のどや口の中まで炎症が広がることもあります。
風邪でもないのに頭が痛い
頭痛には、「片頭痛」「緊張型頭痛」「大後頭神経痛」という、3つのタイプの頭痛があります。
これら3つの頭痛に共通していえるのは、どれも筋肉の緊張によって起きているということです。
長時間のパソコン作業やスマホの操作、猫背などの悪い姿勢、小さく浅い呼吸、日々のストレスなど。思いあたるところのある方は要注意。
これらの良くない生活習慣こそが、頭痛をつくりだしています。頭痛は自然発生的に起きているわけではないのです。
交感神経の働きが強くなれば、筋肉は緊張し、頭痛が起こりやすくなります。また血管の拡張や収縮のコントロールもうまくできなくなり、脳内で血管が拡張します。これも頭痛の原因となります。
自律神経が乱れる原因
自律神経とは、体内の循環器、呼吸器、消化器など、体内活動に必要不可な器官の活動を、自分の意思と関係なく自動的に調整している神経を指します。そして、自律神経失調症とは、この機能が乱れることにより、体に様々な不調をきたしている状態のことです。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経には、心と体を緊張させて興奮状態に導く役割が、そして副交感神経には、心と体を鎮め、リラックス状態に導く役割が、それぞれあります。この2つは、どちらが良くてどちらが悪いというものでもなく、この2つがバランスよく機能している状態が望ましいとされています。
そして、この自律神経が失調するということは、2つのバランスが乱れ、緊張状態がずっと続いたり、逆に何もやる気が起きなくなってしまう状態を指しているのです。
これは、単にメンタルの問題だけではありません。実際に内臓機能や筋肉が正常に働かなくなることにより、体が動かなくなったり、胃のむかつきやめまいなどの不調をきたしたりしてしまうのです。
自律神経は一度失調すると、なかなか治りづらいものでもあります。通常の怪我や骨折なら、その部位を縫合・固定したり、自分の意思で安静にすることも可能ですが、自律神経は自分の意思とは無関係に動く神経であることから、自分の意思だけではなかなか回復させられないのです。
ひとつひとつは小さな症状ですが、治さずに放っておくと、うつ病などの重大な病気に転じてしまうため、甘く見るのは禁物です。
自律神経を整えるために見直す、5つの習慣
自律神経にとって良くない習慣とは交感神経の働きが高まりすぎて、緊張状態が続くような習慣です。
反対に自律神経にとっての良い習慣とは、副交感神経の働きが高まり、リラックス状態が続くような習慣です。副交感神経の働きを高めてリラックスができれば、ほとんどの症状が出なくなります。
日常、無意識で行っている良くない習慣そのものが、自律神経の乱れをつくり、自分でも気がつかないうちに症状を生み出しているのです。
1:姿勢の習慣
これは日々を生きていく中で重要な、「姿勢」に関する習慣です。
単純なことゆえに意外と軽く考えがちですが、姿勢は筋肉の状態、内臓の状態などに密接に関わっていますから、これを正すことで自律神経の不調は改善していきます。
自律神経をえるには、背中や肩、首や頭蓋骨を包む筋肉、内臓や神経の働きを良くするために、お腹をへこませて、背筋を正しい状態にするよう意識します。
せっかく背筋を正しく伸ばしても、頭部が首から垂れ下がっていたら背骨に負担がかかりますから、電車の中でスマートフォンは見ないなど、下を向かない工夫をしましょう。胸の筋肉を硬くして、巻き肩や猫の姿勢をつくりださないためには、歯を食いしばらないことも大切です。
これらのことを行い、正しい姿勢をつくったら、その状態のまま、お腹をへこませて防を膨らませる、深く大きな胸式呼吸を行うようにしましょう。
深く大きな呼吸は、脳や筋肉をリラックスさせ、副交感神経を働かせる作用があります。無意識にできるようになると、体の調子は自然と整ってきます。
2:運動の習慣
人間も動物ですから、動かないでいれば筋肉も弱りますし、体の機能も正常に動かなくなっていきます。実は人の体は歩く動作によって機能が整うようにつくられています。運動する習慣を身につけて、自律神経を整えていきましょう。
自律神経をえる運動として有効なのは、ストレッチです。一日中デスクに座って同じ姿勢をとり続けていると、筋肉が硬くなります。定期的にでも良いですし、少し体が硬くなったことに気がついた時でも良いので、オフィスで椅子に座ったままできるストレッチを行いましょう。
翌日に疲労を持ち越さず、深い睡眠をとって体を回復させるために、寝る前にはストレッチを行い、体をリラックスさせることも大切です。
有酸素運動として、ウォーキングやジョギング、自転車や水泳などを行うと、体が歪みづらく自律神経を整える効果が高くなります。
3: 食事の習慣
食べ物とは体に取り込んで栄養に変わるものですから、体にとって悪いものを摂れば、当然、体調も悪くなります。反対に良いものを摂れば、体調は良くなります。自律神経にとって良い食べ物を摂ることによって、内臓の働きが良くなり、自律神経も整います。
内臓の働きを良くするために、毎日1.5~内2リットルの水を飲みましょう。塩分の摂りすぎは腎臓に負担をかけ、自律神経の乱れをまねきます。それを防ぐためにも、ラーメンやうどん、スナック菓子など塩分の多い食事を控えるようにしましょう。
疲れたからといってチョコレートや甘いものを摂ると、血糖値が上昇し、膵臓や肝臓に負担がかかります。GI値の低いバナナやさつまいもに置き換えてみましょう。
コーヒーや栄養ドリンクの覚醒効果に頼っていると、自律神経の乱れにつながります。慢性的な疲れを感じたら、カフェインの入っている飲み物をやめて、ノンカフェインに切り替えてみてください。
4:睡眠の習慣
睡眠の質が悪く、体の回復が悪ければ、疲れをとることができずに、体が弱っていきます。質の良い睡眠の習慣をつけることによって、回復力を上げて、強い体を手に入れましょう。体内時計を教えると自律神経も整いやすくなります。
「疲れたら休む」ではなく、意識的に睡眠や休息の習慣を身につけると、自律神経が整いやすい体質に変化していきます。
トリプトファン、ビタミンB6、炭水化物を毎日摂取することで、セロトニンをつくり、メラトニンに変化させ、睡眠の質を向上させることができます。
朝日を浴びながらウォーキングを行うことで、セロトニンの分泌を活性化し、さらに体内時計を整えていくことができます。また、休みの日の寝だめはせずに、毎日決まった時間に起きることを心がけてください。さらに、寝る前の1時間の行動パターンをリラックスする行動に変え、睡眠の質を向上させることができます。
5:考え方の習慣
行動の習慣を改善すべく、「体」を改善してきましたが、自分の意識下にある、自律神経を乱す要因をなくしていくためには考え方を変えることが不可です。
ふと気がつくとストレスになっている仕事や人間関係などばかりが頭の中に浮かんでくるという経験はありませんか?これはストレスになることを頭に思い浮かべてしまう癖がついてしまっているせいなのです。
完璧主義もよくありません。100点を取らないと気が済まない、という考え方は失敗を許せなくなり、余計なストレスをためてしまいがちです。また、自律神経を失調している人は、ネガティブに考えすぎて、小さな失敗が大きな失敗に見えてしまう傾向があります。考え方を切り替えることで生活はずいぶんと楽になります。ぜひ積極的に意識していきましょう。