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痛風かと思ったら尿酸値をチェック

2024/01/07

痛風かと思ったら尿酸値をチェック

 

健康診断や人間ドックの結果で多くの人々が「尿酸値が高い」ことを指摘されています。尿酸は体内でできる老廃物のひとつですが、『血液中の尿酸の濃度が高い状態=高尿酸血症」が続くと体内に尿酸の結晶が蓄積し、痛風と呼ばれる関節炎を起こしたり、高血圧などの生活習慣病を悪化させたり、生活習慣病の要素のひとつでもあります。

「尿酸値が高い」人でも、健康診断などで尿酸値が高いことだけが問題になった人、それ以外にも合併症がいろいろある人、痛風関節炎を起こしてしまった人と、いろいろな段階があります。尿酸値の高さによっても、治療方針や治療目標も異なります。

痛風かと思われた方は正しい知識をつけ、ご自身が今何をすべきなのかを理解し治療されることをお勧めします。

 

高尿酸血症ってなに?

 

尿酸値が高いとなぜいけない?

 

血液中の尿酸の濃度のことを尿酸値といいますが、尿酸値が7.0mg/dLを超えたら「高尿酸血症」と呼びます。いまは何の自覚症状もなくても、高尿酸血症は様々な合併症の黄信号です。

 

①高尿酸血症は痛風発作や腎障害の予備軍

 

高尿酸血症の状態が長く続くと、尿酸の結晶が体のあちこちに沈着始め、激痛で知られる「痛風発作」をはじめとする様々な症状を引き起こします。痛風発作にも次のような症状がでてきます。

腎障害(痛風腎)

 

尿酸の結晶が腎臓に沈着して、腎臓の働きが低下する。腎障害が進むと腎不全を起こし、透析が必要になることも。

痛風結節

 

尿酸の結晶が皮下組織(皮膚の下)に沈着してかたまりができ

る。ひじや手の甲、耳介などの体温の低いところにできやすい。

痛風発作(関節炎)

 

尿酸の結晶が関節内に沈着して起こる関節炎で、あるとき急に腫れや激痛を伴って起こるのが特徴。

尿路結石

 

尿が酸性になって、尿の中の尿酸が溶けにくくなり、結石ができる。

②高尿酸血症は生活習慣病や慢性腎臓病を合併しやすい

 

最近では、高尿酸血症は高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を合併しやすいことがわかってきました。生活習慣病のベースにはメタボリックシンドロームといわれる内臓脂肪型肥満の代謝異常がありますが、高尿酸血症も全身の代謝異常のひとつの現れともいえます。高尿酸血症はこれらの疾患と密接に関係し、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクを高めているといわれています。

尿酸とは

 

尿酸はひとつの物質の名前です。尿酸のもととして食品に含まれる「プリン体」が有名ですが、実は食品のプリン体からつくられる尿酸は全体の20%に過ぎず、残りの80%は体内でつくられるエネルギーの燃えかすと、遺伝子が分解されることによって生じる老廃物です。できた尿酸は、尿の中に排泄され、体内の尿酸の量(酸プールといいます)は常に一定に保たれています。

尿酸値はどうして高くなるの?

 

体内で尿酸がつくられ過ぎたり、不要となった尿酸がうまく体の外に排泄されなくなることで、血液中の尿酸の濃度が高くなります。

高尿酸血症と痛風の関係

痛風とは

 

風発作は痛風関節炎ともいわれ、尿酸の結晶が関節に沈着することで起こります。発作はある日突然起こり、腫れと激痛を伴うのが特徴です。

場所は足の親指の付け根が最も多く、痛むのは普通一度に1ヵ所だけです。

発作は1~2週間程度で治まりますが、根本にある高尿酸血症を放っておくと発作を繰り返します。

関節炎の起こりやすい場所

 

・足の親指の付け根

・足首

・足の甲

・膝

・手首

・ひじ

痛風になりやすい人

 

・激しいスポーツを好む

・アルコール、特にビールが大好き

・太っている

・仕事も遊びもバリバリこなしている人

痛風の起こるしくみ

 

尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が長く続くと、血液に溶けきらなかった尿酸が結晶化して、関節に沈着します。ストレスや激しい運動、尿酸値の急激な変動など何らかのきっかけで、沈着していた尿酸の結晶が関節の中ではがれ落ちると、白血球がそれを排除しようと格闘します。その結果、関節の炎症(痛風発作)が起きます。

 

高尿酸血症と痛風の治療法

 

高尿酸血症と痛風治療の根本治療は尿酸値 6.0mg/dL以下を目指した尿酸値の継続的なコントロールです。起きてしまった痛風発作の治療とは分けて考えます。

高尿酸血症だからといって、すぐに薬による治療が必要になるわけではありません。尿酸値が7.0mg/dLを超えている方は、まずは生活習慣を見直しましょう。

ただし、次のような方は薬を飲む必要があります。

痛風発作を起こしたことがある、または痛風結節がある方

 

●尿酸値が8.0mg/dL以上で合併症のある方

合併症とは、腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、糖尿病、

メタボリックシンドロームなど。

●尿酸値が 9.0mg/dL以上の方

 

 

生活習慣の改善

 

尿酸値が高い人の生活改善のポイント

 

・食事の量を抑えて、体重を落としましょう。

・アルコールを減らしましょう。

・水分を十分にとりましょう。

・適度な有酸素運動をしましょう。

・ストレスを上手に発散しましょう。

食事の量を抑えて、体重を落とす

 

肥満を解消すると、多くの人で尿酸値が下がってきます。尿酸値が高しらといって、食べてはいけないものはありません。いろいろなものをずつ食べて、食事全体の量(カロリー)を抑えましょう。

食事で気をつけるポイントは次の3つです。

①適正カロリーを守る

 

1日に摂取する適正カロリーの目安

標準体重 25~30kcal

 

★標準体重は、身長(m)222で求められます。

②プリン体のとりすぎに注意する

 

食べてはいけないものはないとはいえ、プリン体を多量にとると尿酸値が上がることに違いはありません。ポイントは食べる量と頻度。魚卵や内臓などのプリン体の多い食品は「たまに」「少し」にすることが大切です。

③アルカリ性食品を積極的にるようにしましょう

 

尿酸値が高いと尿が酸性になり、尿酸が溶けにくくなって尿路結石ができやすくなります。野菜、海藻、牛乳などのアルカリ性食品を積極的にとるとともに、水分を十分にとりましょう。

アルコールを減らしましょう。

 

ビールにプリン体が多いというのは有名な話ですが、ビールに限らずアルコールそのものが尿酸値を上げる原因になります。プリン体の量はお酒の種類によって違いますが、たくさん飲んだら同じです。

尿酸値の高い人はなるべくお酒を控えましょう。

 

尿酸値を上げない1日の飲酒量の目安

・ビール 500ml

・焼酎25度 90ml

・ウィスキーまたはブランデー40度

・日本酒 180ml

・ワイン 180ml

水分を十分にとりましょう。

 

尿酸は尿から排泄されるため、尿の量が増えれば、体内の尿酸が体の外へ出やすくなります。心不全や腎不全で水分制限の指示を受けているような場合を除いて、1日2Lを目安に積極的に水分をとりましょう。

適度な有酸素運動をしましょう。

 

肥満の解消、尿酸値の高い人に合併しやすい生活習慣病の予防のためにも運動することがすすめられます。ただし、激しい運動は、かえってエネルギーの燃えかすである尿酸が増え、尿酸値を上げる原因になるので要注意。

ウォーキングのような軽い有酸素運動を継続して行うのが効果的です。毎日の生活習慣に取り入れる工夫をしましょう。

ストレスを上手に発散しましょう。

 

痛風になる人には、せっかちで行動的な人が多いといわれています。食事をすれば早食いに大食いで、仕事はバリバリこなし、プライベートもじっとしていない・・思い当たる方はいませんか?こうしたタイプの方はストレスにさらされやすく、ストレスは尿酸値を上げるといわれています。

尿酸値を下げるためにも、ストレスを解消することが大切ですが、そのストレス発散法が飲酒や過食では、逆に尿酸値を上げる結果となってしまいます。

十分な睡眠、適度な運動など、体に優しい自分なりのストレス解消法を見つけてください。

痛風発作(急性関節炎)の治療

 

痛風発作が起きたら、激痛を和らげるために関節の炎症を抑える治療を、発作が起きている間だけ行います。

 

発作が起きたときの対処法

 

痛風発作が起きたら、患部を心臓より高くして冷やしましょう。温めたり、もんだりすると逆効果です。無理に歩き回るのも禁物です。

 

尿酸値を下げる薬は発作が治まってから

 

痛風は尿酸値が高いために起きる病気ですが、発作の治療に尿酸値を下げる薬は使いません。痛風発作は、尿酸値が上がったときだけでなく、急に下がっても起きやすいのです。発作中は尿酸値をなるべく変動させないことが原則。発作が治まってから、尿酸値を下げる治療を始めます。

高尿酸血症の治療

 

痛風発作が治まったら、まるで病気が治ったかのように見えますが、根本にある高尿酸血症は何も解決していません。ここからが本当の治療の始まりです。高尿酸血症の治療で、体内にたまった尿酸を溶かしだして、痛風発作や恐い合併症を予防しましょう。

尿酸値はゆっくり下げましょう。

 

血液中の尿酸の濃度が急激に下がると、関節などに沈着していたの結晶が一気に溶け始めることがきっかけで、痛風発作が起こるがあります。尿酸値を下げる薬を服用する際は、発作を防ぐため医師の指示に従い段階的にゆっくり尿酸値を下げていきましょう。

 

尿酸値が下がったら

 

尿酸値を目標値まで下げたら、その値をしっかり維持しましょう。尿酸値を 6.0mg/dL以下に保てば、痛風発作は起こらなくなります。そして、そのような尿酸値を下げる生活習慣を続けていくことが、心筋梗塞や脳卒中のような様々な合併症を予防することにもなるのです。

医師の指示に従い、定期的に受診しましょう。

薬を服用する際は医師の指示に従い、自己判断で薬を減らしたり止めたりしないようにしましょう。

高尿酸血症や痛風の治療は継続することが大切です。定期的に診察を受けながら、根気よく治療を続けるようにしてください。