2023/01/23
便秘の原因
便秘の症状
便秘というとまず「お通じの回数が少ない」ということが頭に浮かぶのではないでしょうか?でも、お通じの回数が少なくても便が硬くなく、つらい症状がなければ便秘とはいいません。
便秘の症状は、大きく「排便回数の減少」と「排便困難」に分けられます。
「排便回数の減少」は、排便がおおむね週3回未満の場合をいい、回数が減って排泄物がたまり腹部膨満感や腹痛、腹部不快感を伴うことがあります。
また、排便時の過度のいきみ、便が硬くてなかなか出ない、排便後も便が残っている感じ(残便感)などの症状があることを「排便困難」といいます。
どうして便秘になるの?
排便のメカニズムからみた便秘の病態
食べ物を摂取すると、消化管を移動しながら消化と吸収が行われ、残った老廃物(食残渣)が便となって、1〜3日後に排泄されます。
ところが、何らかの原因で小腸や大腸の働きが低下すると、食残渣の移動に時間がかかり通常よりも余計に水分が体内に吸収され、便が硬くなります。
また、直腸の筋肉がうまく機能せず便が排出されない場合もあります。
ストレスなどで便秘になったり、便秘になってストレスを増大させるといった悪循環「脳-腸相関」が原因になることがあります。
便秘の原因は?
消化器系・全身性の病気が原因(器質性・症候性便秘)
●消化管の病気(大腸がん、炎症性腸疾患、腸閉塞など)により、腸管内が狭くなったり腸の働きが低下して便秘になることがあります。
●糖尿病やうつ病など、他の病気に伴って二次的に便秘になることもあります。
お薬が原因(薬剤性便秘)
●腸管の運動を抑制する作用をもつ薬剤(オピオイド系薬、抗コリン薬、抗パーキンソン薬など)によって便秘になることがあります。
機能性便秘
●機能性便秘とは、消化管の形態的な変化がなく、器質性・症候性便秘、薬剤性便秘にあてはまらない便秘です。
便秘型過敏性腸症候群(便秘型IBS)
●機能性便秘と同じく、器質性・症候性便秘、薬剤性便秘にあてはまらない便秘で、腹痛あるいは腹部不快感がある場合は、便秘型IBSの可能性があります。
●IBSでは、ストレスなどで便秘や腹痛が起こり、それらの症状によりストレスが増大する「脳-腸相関」が起こりやすく、便通異常、腹痛、不安感などの出現・増悪がみられます。
便秘の治療目標
「便秘のことがきにならない生活」を目指す
10年以上も便秘に悩まされている人、最近便秘が気になりだした人、他の病気が隠れていないか不安な人など、便秘の悩みは人それぞれ。
つらい症状や気になる症状があるなら、便秘ぐらいで…・・と遠慮しないで医師に相談してみましょう。便秘は以下のような目標をもとに治療を行います。
便秘症状を改善します
便秘による酸痛・腹部不快感、腹部密満感を改善し、「強くいきまないと便が出ない」、「硬くてなかなか出ない」、「残っている感じがして、スッキリしない」などの排便困難感や残便感などの解消を目指します。
理想的な便の形状を目指します
硬便でも軟便でもない普通便を目指します。表面がなめらかで柔らかいソーセージ状、あるいは蛇のようなとぐろを巻く便のように適度な柔らかさと大きさの便形状にすることが重要です。
排便回数にこだわりすぎないようにします
兎養状態や水様便でも回数が多くなることがあるので、「週に◎回しか便が出ない」、「以前に比べて便量が少ない」と、回数だけに着目するのではなく、便の形状と量などもあわせて確認しながら、正常化を図ります。
具体的にどうやって治療するの?
食生活を見直す
●朝早めに起きてきちんと朝ご飯を食べることで大腸が動き、排便が促されます。バランスのよい食事を心がけましょう。
●食物繊維の1日摂取量は24g以上が理想とされています。豆、根菜、海藻、キノコ、果物などを意識して摂りましょう。ただし、摂り過ぎるとかえって便秘になることもあるので、食事全体でのバランスのよさを心がけましょう。
●マグネシウムも不足しがちな栄養素の一つで、摂取量が少ない人に便秘が多いことが知られています。
マグネシウムを多く含む海藻、玄米、納豆、ナッツ類も摂るようにしましょう。
●ヨーグルトや乳酸菌飲料で腸内細菌のバランスを整えることも便通の改善に働きます。
適度な水分摂取を
便秘の改善には適度な水分摂取が不可欠です。ただし、腸が敏感な場合は、刺激しないよう冷たい飲み物は避け、ぬるま湯やお茶で少しずつ水分補給を行いましょう。
規則正しい生活を
排便のリズムをつくるために規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に消化が進むので、翌朝の排便の準備のために十分な睡眠をとるようにしましょう。早起きして朝のトイレタイムを確保することも大切です。
メリハリをつけて気分転換を図る
便意を我慢しない
便意を感じたら、なるべく我慢せずにすぐにトイレに行きましょう。
ストレスとうまく付き合う
「悩み事を抱え込まないで信頼できる人に聞いてもらう」、「やるだけやって、あとは割り切る」、「クヨクヨせずに気持ちを切り替える」など、ストレスとうまく付き合い、ためこまないようにしましょう。
また、何事にも100点満点ではなく、75点主義を目指しましょう。
休養・リラックス
1日に1回でもゆっくりとした時間をつくり、体と心をリラックスさせましょう。
楽な恰好、楽な姿勢で、ゆっくり呼吸しながら気持ちを落ち着かせてみてください。アロマテラピーなどを取り入れるのもよいでしょう。
適度な運動
適度な運動のあと十分な休息をとることで、大腸の動きが活発になり、排便が促されます。
テニスやゴルフ、ヨガ、ピラティスなどお腹をひねる動きや揺らす動きがある運動が効果的です。ストレス解消も兼ねて1日1回15~20分程のウォーキングなど、無理なく続けられる運動を取り入れるのもよいでしょう。
便秘のタイプに応じた薬物療法(主な便秘薬)
マグネシウム製剤
マグネシウムは体に吸収されにくく、大腸に留まります。
浸透圧によって腸の中に水分を引き込み、便を柔らかくします。
グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト
慢性便秘症または便秘型過敏性腸症候群に用いられる薬です。腸の内容物に水分を与え腸管内での便の移動をスムーズにして排便を促します。さらに、痛みに過敏になっている神経の伝達を抑え、腹痛や腹部不快感を改善します。
クロライドチャネルアクチベーター
慢性便秘症に用いられる薬です。小腸に作用して水分の分泌を増やすことで、便を柔らかくします。腸管内で便の移動がスムーズになり、排便を促します。
肥汁酸トランスポーター阻害薬
肥汁酸の量を増やすことで大腸管内での水分を分泌させます。消化管運動が促され、排便回数などを改善します。
刺激性下剤
硬い便が詰まった場合に腸の粘膜を刺激させ排便を促す意味で、一時的に大腸刺激性下剤を使用することがあります。
漢方製剤
漢方は患者さんの体質や病気の勢いに応じて処方されます。
その他
消化管機能改善薬として、胃や腸の運動や働きを調整する薬や、消化管のけいれんを鎮める作用をもつ抗コリン薬、消化管運動を調整したり抑制したりするためにオピオイド作動薬が使われます。
整腸薬は腸の働きを整えて改善する薬で、ビフィズス菌や乳酸菌製剤が代表的です。
症状に応じて、抗不安薬や抗うつ剤を併用して、不安やストレスの軽減を図ることもあります。