2022/12/12
鉄欠乏性貧血のあれこれ
貧血とは
・貧血とは
貧血は別名で「薄い血」と呼ばれることがあります。
血液はさまざまな成分でできていますが、その中でもっとも多いのが血液の赤い色のもとになっている赤血球です。赤血球はヘモグロビンを含み、その主成分は鉄です。鉄は成人でも体内に約4gしかない微量元素で、たん白質と結合して肝臓や脾臓・骨髄に貯蔵鉄として存在するほか、赤血球中にあって酸素を体の隅々まで運ぶ役割をはたしています。貧血とは、なんらかの原因で赤血球の減少する病気のことをいいます。
・赤血球が少なくなる原因
赤血球が少なくなる原因にはさまざまなものがありますが、もっとも多いのが鉄欠乏性貧血といわれるもので、出血や妊娠・分娩・授乳、成長、あるいは食事中の鉄分不足によって起きます。鉄は体内では造り出せないので、不足分は食事や薬剤により鉄分を補充することになります。
女性に多い鉄欠乏性貧血
血液中の鉄の欠乏は、発育期の男女と受胎可能年齢の女性によく起こります。その理由は、これらの人々は鉄の必要度が高いため、食物からの鉄だけでは鉄分が不足するからだといわれています。
・思春期
初潮期以降のこの時期の女性では、貯蔵鉄が失われて貧血の前段階とされる鉄欠乏状態になりやすいといわれています。生理的に鉄が必要とされる一方で、美容上の理由などから極端な節食・偏食に走りがちなのも一因です。思春期の貧血は、妊娠貧血の誘因となるので注意が大切です。
また成長期なので鉄要がもともと高まっています。
・妊娠期
この時期の貧血は、未熟児出生や乳児貧血の発現など、多くの悪影響が現れるもとをつくりだします。鉄分の多い献立に留意し鉄剤の服用も考慮するなど、鉄分の補給を心がけましょう。
貧血があると・・・
なんとなくだるい、疲れやすい、肩こり、頭痛、朝起きにくいなどの症状を感じている人の中に、貧血の人が意外に多くいるといわれています。
・献血者の血液状態
献血者の血液状態の調査によりますと、献血を申し込んだ人のうち血液の比重が低く鉄欠乏性貧血の疑いが強い人が女性では19.4%にも達しており、女性の5人に1人が鉄欠乏性貧血の疑いがあります。
・貧血を放置しておくと…
貧血を放置しておくと、健康にさまざまの悪影響が出ます。とくに妊娠中の女性では、生理的に鉄分を余分に必要とするため資血になりやすく、貧血のお母さんから生まれてきた赤ちゃんは生後2〜3ヵ月以降に乳幼児貧血が起こることが最近わかってきました。
(2004年度日本赤十字社調査)
暮らしの中のチェックポイント
貧血を予防し早期に治療するため、暮らしの中で次のチェックを心がけましょう。
・出血をともなう慢性疾患の治療
貧血の原因となる慢性の出血で、もっとも多いのは骨や大腸などの消化器からの出血です。女性では、産婦人科関係の病気による出血があります。
他に尿路系の出血もありますが、男女ともに注意したいものは痔からの出血です。出血をともなう慢性の病気は、必ず治療を受けることをおすすめします。
・栄養・運動・睡眠
バランスのとれた食事にくわえて、生活が不規則にならないように心がけ、十分な睡眠に留意しましょう。また運動量の範囲は、貧血の程度に応じて自然に加減されますが主治医の指示に従ってください。
・便秘
鉄分を多く取ると腸の働きが弱まりがちなので、便秘の予防を心がけましょう。
食品中の鉄の吸収は・・・
鉄欠乏性貧血は一種の栄養障害であるともいわれるほどで、何をどのように食べればよいのかということは、非常に大切です。でも、飽食の時代になぜ栄養障害なのでしょうか。
・食物に含まれている鉄
非へム鉄・・吸収が悪い:ホウレン草など主に野菜に含まれています。
へ ム 鉄・吸収が良い(非へム鉄の5倍):レバーなど主に肉類に含まれています。普通、食事中の鉄の90%は非へム鉄です。しかし、幸いなことに成人の1日の摂取量は男性で10mg、女性12mgくらいですから、貧血
状態がよほど進んだ人でない限り、バランスのとれたメニューを心がけていれば必要量は確保されています。
※へム鉄が吸収されやすいのは、小腸で溶けた状態になるからです。これとは逆に、小腸で沈殿状態となるため吸収が悪いのが非へム鉄です。
・バランスのよい食事
そこで問題となるのが、非常に偏った食事のメニューです。しかも非へム鉄
は、コーヒーやお茶で吸収が一層悪くなります。野菜だけでなく肉類も加えたバランスのよい食事をとることが必要です。つまり、スタイルを気にした生野菜にコーヒーの食事は好ましくありません。一方、野菜に肉の取り合わせは良いメニューといえます。
貧血によいメニュー
鉄欠乏性資血のメニューでもっとも大切なことは、1日の栄養所要量を満たすバランスのよい材料の選択に加えて、効率のよい鉄の補給を考慮した取り合わせということになります。なお、若い女性中心に増えている朝食ぬきの習慣は、この際きっぱり改めましょう。
・調理上の工夫
酸味・香辛料・香味野菜を上手に取り入れることです。どれも胃液の分泌をよくするので、鉄の吸収をうながします。また、香味野菜はレバーなどの特有の臭みも消すので、一石二鳥の効果があります。
・外食時のメニュー
丼ものやカレー・チャーハン・ラーメン・サンドイッチ・うどん・そばなどは、糖質以外はすべて栄養不足と考え、少なくとも牛乳と果物ぐらいは補ってください。
・飲み物・デザートメニュー
コーヒーや紅茶はやめて、ミルクカトマトジュースにし、ケーキのかわりにプリンやババロアなどを選びましょう。